ドイツは脱原発の決議間近らしいですが、ドイツ環境分野のキーマン、トリティーン緑の党会長(元環境大臣)の講演会に行ってきました。
「フクシマ」を受けてメルケル首相率いる保守系与党もついに脱原発に舵を切ったようですが、日本の今後を考えるにも、とても参考となる講演会でした。しかし原発大国のフランスを「かわいそうな国」とばっさり斬っていたのが印象的でしたね。
ということで、ちょっと長いですが、どうぞ。
…………
■ユルゲン・トリティーン 元ドイツ連邦共和国環境大臣 講演会
「原発? おことわり! ~脱原発・代替エネルギー供給を目指すドイツ」
□日時:2011年6月17日(金)10:40~12:30
□場所:早稲田大学国際会議場3階会議室
□共催:早稲田大学国際部国際課 / EUIJ 早稲田
□協力:ドイツ大使館
□内容:
○司会挨拶/縣 公一郎教授(政治経済学術院)
・前環境大臣、トリティーン様本日はお越しいただきありがとうございます
皆様には本日お越しいただきありがとうございます
皆様にトリティーンさんの紹介を簡単にしたいと思います
トリティーンさんは故郷、自分が勉強された地域の議会で選ばれました
その後州議会議員に選ばれました
その後1998年に連邦議会議員に、同時に環境大臣(連邦環境自然保護原子力安全大臣)になり
当時は社会民主党と緑の党の連立政権で、7年間環境大臣をやられた
2009年から現在まで、緑の党の院内総務をやられている
では講演をお願いいたします
○講演
・先生方、おあつまりのみなさま、早稲田大学での講演の機会を頂き大変ありがたく思っております
私は英語でやるものと思っていたので、パワポは英語で用意されてしまいました
ドイツ語でという話を伺いまして
ずっと同行している通訳が通訳しているので、うまくやってくれると思います(会場笑)
よくこの6月の末に、おそらく全政党が賛成し
2022年までにすべての原発を閉鎖するという決定がドイツの連邦議会でなされると
どうしたらこのようなことが可能なのか
現在17基あるうちの半分の即時閉鎖がどうして可能なのか
この決定が下されるわけですが
事の始まりは10年前、1998年、ドイツ社会民主党と緑の党が連立政権を組み
原子力エネルギーをやめようと決定したときにはじまる
最終的にそうしようときめてから、2001年に連立政権は電力事業者大手4社と合意した
原発の利用をやめ、段階的に原発を閉鎖していくことについて合意した
社民党、緑の党連立政権と事業者との合意
激しく抵抗したのは当時野党のメルケル首相のCSUの会派
最終的にこの同意がどのようなものであったかというと
それまで原発は運転期間に制限がなかった
しかし全運転期間を平均32年として
発言できる電力量を決め
それで原発、電力会社通りの運転結果の期間をやり取り可能とした
沿った形で原子力法を改正することが同意された
原子力法の正式名称は
元々は原子力の平和利用のための法律だったが
原子力核エネルギーの秩序正しい終了に向けて、と大きく変えられた
この法律の制定理由、改正理由は、非常に予兆を含むような目的があった
その目的は、核融合のリスクというのがどの原子炉であっても決してこれをコントロールしたり
完全に回避することは無理であると
この大きなリスクを長期的、永遠に私たちは抱えていけない
これが制定理由であると
福島原発において3機がメルトダウンの危険があることを見ると
当時からこのリスクについてそうしたリスクを持っていたことはお分かりいただけると思う
当時から、すでに原発の3機が閉鎖されてきている
メルハイムケーリッヒ、シュターゼ、オーブリッヒハイムの3機の原発です
2001年に合意された時の、こちら(表)が原発の運転機関
こちらが32年としたときの終了時期
こちらは2011年の時期だが
ここまで即時閉鎖される原発が含まれている
どのみち2011年の合意時点でこれらの原発は閉鎖される時期にあった
それよりも更に大きな重要性を持つといえるのが、間もなく制定された再生可能エネルギー機構
電力を買い取る買電法
低価格で買い取ることが義務付けられました
この固定価格というのがどういうものか問うと
20年間買い取り価格が保証される
しかしながら毎年その固定価格は逓減的に減っていく
1年後に何%か
こうすることによって、一方では固定価格があるので投資をするための予見可能性による安定性の保証
一方では逓減的なので、効率を上げないといけないプレッシャーがあるということになる
この結果、新たな産業分野が生まれました
ドイツは今日風力、太陽光、バイオマスなどの分野で大変成功している
技術的のみならず市場的にも国際社会をリードしている立場にある
ドイツはもともとエネルギー資源を輸入してきた国である
このようにして国内においてエネルギーを生産できるようになった
2006年に50億ユーロ分の費用をカットできた
更に、その下をご覧いただくとわかるが
2011年に37万人の新規雇用が生まれた
こうした状況を見てOECDは独特な効率性の良さを示しているという評価を下している
そもそもこのように原子力エネルギーを再生可能エネルギーで代替することは可能かということだが
2001年の段階では日本の原子力エネルギーの割合とほぼ同様の27%あったが
このように下がってきた
今後の予想として、2020年までには1%まで下がるだろうと
他方再生可能エネルギーはどうかを分けてみていきましょう
青い線は、再生可能エネルギー制定当時に目標として掲げられたもの
2020年までに20%をカバーしようという予測および目標を元に制定された
しかしながら再生可能エネルギーの普及は予想を超える広がりを見せたことから
2008年CDUとSPTの大連立政権だったが、目標の見直しをした
2020年には30%を占めるだろうと
これで原子力エネルギーを代替するどころか、上回るものとなっている
しかし赤い線(30%)も間違っている
正しい線は緑の線です
だから、緑色を選びました(会場笑)
2010年ですでに再生可能エネルギー17%を私たちは実現しています
現在の政権はEUに対して再生可能エネルギー利用の指針について、38.6%を2020年までに達成するとしました
この2つの施策を取ってきたことにより、非常に大きな変化が生まれた
ドイツはエネルギーは輸入を続けてきた国
しかし電力となるとヨーロッパは送電インフラがつながっているので輸出と輸入双方を行ってきています
こちらご覧いただいているのは、輸出超過分、NETの輸出分の推移
これにより相殺分で純輸出国になってきている
大型の発電所7機分に相当する量を輸出している
以上がこれまでの背景です
こうした背景を土台として、福島の事故を受けて
すべての政党が一致する中、どのような結論を政治として導くか
それが脱原発となったわけであります
私どもは今回の事態を受けて次のようなことをした
段階規制、原発は段階的な閉鎖をしっかり行っていくべきである
メルケル政権が稼働期間の延長としたが、すぐに撤回すべきだと要求してきた
脱原発を行うだけでなく、緑の党では脱原発のステップをより加速すべきであると
私どもの試算では2017年までに、目標となるが完全な脱原発を果たすことは可能であると
このように要求を掲げます
今回の脱原発で深刻度は少なくなるものの、解決に至らない問題がある
それが放射性廃棄物の問題です
こちらでご覧いただいているのは、公式の名称が試験最終処分場、アッセとよばれるもの
ドイツ北部にある施設の状況、放射性廃棄物が入ったドラム缶
岩塩鉱の中に貯蔵されている様子を示すものです
岩塩鉱ですので、塩分を含んでいる水が滴る
そうすると容器がさびて
さびに放射性廃棄物を含む液体が漏出するということにある
関係当局は廃棄物を外に出すことを検討しています
私どもは、すべてのこれまでの経緯を白紙に戻し
いかなる可能性も配乗しない形で
最も適切なサイトを精査していかないといけない
岩塩鉱が適地かは疑念を持つ専門家が増えています
もし一つの分野から早く脱出(脱原発)を図りたいのであれば
別の分野に早く入らないといけない
すなわち再生可能エネルギー網という新しい分野をさらに充実させていかないといけない
この法律の2つの重点分野を改正を目指す
一つがリパワリング、出力改正です。とくに風力に対して
再生可能エネルギー法が制定された当初の時期は
風力発電機1機の出力は6~700kW
それが現在では陸上の設備であっても6MW、中には7MWのものもある
このようにして、より再生可能エネルギーの拡大を図りたいのであれば
最も費用効率がいい形で陸上における風力発電の拡大を図れる
これが短期的な方策だが
長期的方策はバルト海、北海において認可が下りているオフショア発電があるが
海上の部分をより広く利用していくべきなのです
これを実現していくためには、市民近隣住民含めた、透明性を持って計画を進めていかないといけません
そのために様々な面での法改正
建物の高さの分野において公開性が必要です
規制緩和を図っていくが
重要なのは高さ規制の緩和をしていくことです
10mの設備が高くなれば10%出力が伸びるとも言われている
しかし再生可能えエネルギー拡大だけでは十分じゃない
ドイツでは3つのeといっているが
再生可能エネルギーの頭文字がe、エネルギー節約、エネルギー向上と合わせて3つのe
そのために様々な施策がとられている
一つは日本にならってEUが取り入れたもので
トップランナーアプローチ
最も効率が高い機器が7年後には全体の基準として取り入れられてる
どんどん省エネ度が上がっていくダイナミックな制度
こうした省エネ処置はどれだけ重要な効果を持ちうるかは
たとえば待機電力の消費というもの、そのための技術はドイツの家電において
1W以下に抑えることができるのであれば、ドイツ全体で原発2基分の電力を浮かせることができる
そうした広がりを持つ取り組みになりうる
ドイツの産業分野において工場などで使用されているポンプや、ファンのたぐいのものについて
出力調整を微妙・柔軟に行える設備に取り換えたら、原発1~2基分の電力を浮かせられる
化石燃料を使用する発電というものを行っていくのであれば
褐炭、石炭、ガスがドイツでは化石燃料としては使用されているが
効率性が高くなければいけません
私どもは1次エネルギーからの変換効率が60%以上でなければならない
これはガス発電は可能だが、石炭火力では無理なのです
また、こうした選択、ガスを利用していくという選択は賢明なのは、例えば褐炭による発電は
CO2の排出は900g、石炭は600gに対して、ガスは300gという差が見られる、ということもある
さらなるメリットが、ガスにはあります
ガスの利用を進めることによって私ども、24時間365日電力のベースロードを確保しないといけない
こうしたプレッシャーにさいなまれているが、これから逃れられる
ベースロードは、夜間電力需要がない時は無駄になってしまう
ベルギーでも夜間に煌々と高速道路が照らされているようなことになる
再生可能エネルギーの利用を進めると、振幅の問題がでてきます
すなわち調整していかないという課題があるのです
電力の供給のピークとベース、それから需要のピーク、ベースは必ずしも同時に現れるわけではない
クリスマスにはみな静かに過ごして電力消費は減る
しかし風が吹くと風力の供給は多くなる
このようにしてGAPを調整しないといけないことが出てくる
調整電源としての利用可能性は、石炭火力じゃダメです
柔軟に出したり減らしたりは原子力発電でも不可能
こうした再生可能エネルギーは出力にどうしても変動があるので
調整電源として優れているのがガス発電
また、再生可能エネルギーは、分散型であります
これは非常に混乱のもとになります
非常に分散型であり、その間に供給と需要の間のバランスの調整をきちんとしていかないといけない
大変困難なもんであることから
人々は混乱してします、不安を持つところがあるが
できるだけ送配電インフラがつながっておたがって融通しあえないといけない
ヨーロッパではつながっているが、日本では2つのインフラが分離していると聞いています
このさらなるインフラの拡充を図るために配電網のインフラを拡大しないといけないし
送電網へも投資を拡大させていかないといけない
これをうまく進めていくためには、発電する事業者と、送配電系統を運営する事業者が同一ではいけない
分離を図らないとなかなかうまくいきません
風力発電設備の大規模な設備は、大量な発電が可能である
それを需給をバランスよく使っていくためには貯蔵する機能が必要になる
揚水発電というものがその機能があるものとして一つある。スカンジナビアやアルプスであったりする
揚水発電は需要が少ない時は水を上に上げる
発電余力を蓄えておいて、需要が高まったら下におろす
それにより電力がの貯蔵が可能な設備
しかしエネルギーの貯蔵はまだまだ研究を進めていかないといけない
バッテリー技術もその一つ
モビリティを確保するためには、非常に決定的な重要性を持つのがバッテリー・ストレージ
電気自動車には欠かすことができません
もう一つ私たちが産業側と話している貯蔵・調整と言ってもいいが
調整の将来可能な方法として、アルミニウム精製工場を使う
非常に電力を使うが、需要の少ない時に稼働をしてもらって
それに対して調整が可能になるので対価を支払ってはどうかと
アルミニウム分野の企業と話している
調整電源として有望なのがガスであると意識して使ったが
今後バイオガスの利用も同様に有望に広がっていくことが考えられる
しかし今は天然ガスを使うしかない
どこからくるのか
ロシアからのエネルギー依存度を高めたいのか、という批判が来るかもしれない
いや、私の答えはNOです
すなわち依存度を高めたくない
どこからそのガスをもってくるのか
市民から持ってくるのです
ガス、ですね
こちらドイツでは屋内の、建物の熱供給として使われている
工場の熱供給もある
建物の気密性を高めれば暖房の利用が少なくなるので、その分ガスが減るのです
さらにはこうした建物の気密性向上と並んで
温水のために地熱を使ったり
太陽熱をつかったりすることでさらにガスを浮かせることができる
こうした施策をすすめるためにプログラムに資金を振り分けることが必要ですし
太陽光利用へのインセンティブも必要になってきます
この熱供給や気密性というテーマが一方にあり、もう一方に電力というテーマがある
これがいかにつながっているかは、日本でも見られるのではないでしょうか
すなわちドイツと日本は生活形態や水準が似通っているのではないかと思うが
家計あたりの電力使用というのが、ドイツに比べ日本はかなり大きい
例えば、温水機というのは、電力によって水を温めている
その電力はどこから来るかというと、変換効率はなんと30%にしかならない原発で生産された電力だったりする
原発からは排熱がどんどん出ている
さらに日本は空調、クーラー等の利用が多いので、非常に電力を消費する率が高い
この準備の中で発見したことですが
日本の電力消費はドイツの一家計あたりの消費まで下げられれば
27%の原発利用は完全に不要であることが統計上分かりました
今の政権を構成している政権は、再生可能エネルギー法制に対して反対を唱えていた
紹介したような建物回収プログラムに対しても4,5年前までは反対の立場だった
それを変えてきたが、昨年秋まで脱原発の基本構成にむしろ反対していた
しかし今回の福島の事故を受けて
脱原発についても大きな方針転換をした
個人レベルに話を引き下げて
簡単に比喩てきにもうせば
メルケルさんは10年前のトリティーンさんの主張を、10年遅れで取り入れたと
今回6月の初めに政府により提出された要綱、並びに6月末に連邦議会で採択されるであろう関連法案
これを見ると脱原発については私どもの主張に沿ったものになってきている
全体の17基のうち、老朽化している8基を即時閉鎖する
昨年政権が稼働期間延長の決定を行いましたが
この決定は撤回されます
また、運転期間の短いほう、新しいほうの原発も、2022年までに段階的に閉鎖していきます
脱原発の分野では以上の分野のような方針を政府は取るようになってきたが
他方で再生可能エネルギーのほうは、原発の稼働期間を長くといっていた昨年に行っていた35%と
さらに稼働期間を短くする今年は目標が変わっていない
また、まったくエネルギー変換効率の高い基準を設けることなしに、化石燃料の発電を進めようとしている
それによりガスでなく石炭火力のほうをすすめていく可能性が高いです
ドイツは2020年までに、温室効果ガス削減を、1990年比で40%まで下げようという目標を掲げたが
EUの2020年までの削減目標は20%のままです
さていま紹介したのは政府の方だが、緑の党がどういう要求を掲げているかです
政府と同じだが、8基の原発即時閉鎖
これまでわれわれは稼働延長の撤回を要求してきました
2020年よりもっと早い時期に脱原発を実現できると考えている
政府が当初言っていた2040年と2020年とどちらがいいかと言われると当然2020年
再生可能エネルギーの2020年の割合目標を35%ではなく40%以上と掲げるよう要求しています
また、効率というものを高さを条件に加えることにより、火力発電所、石炭火力ではなくガス発電所の普及を要求していく
また、温暖化防止プロセスを国際的に推し進める一助とするために、EUの共通削減目標として、20%ではなく
日本は25%だったと思いますが
30%にすべきと要求しています
また、私たちはエネルギー効率、省エネの目標を拘束力を持つ形で欧州全体で掲げていかなければならないと
2020年までに20%を、EUで拘束力を持つ目標として掲げることを要求しています
ドイツの議論はどういうものなのか
政府と私どもの立場の違いを紹介できたと思う
何十年も原発の問題は私たちの国では意見の対立を進めてきたが
福島の事故を受けて全政党が賛成された形で脱原発が成立します
しかし、そこに至るまでの、道のり、これからの道のりに関しては
高層として政府の持つ方針と、緑の党の方針はかなり違うことがお分かりいただけたと思う
10年間大変な変化があった。今後10年も大きな変化がある
10年後講演会が開けるなら、相手側が与党となっており、その考え方の変化が説明できることを祈っています(会場笑)
その2に続きます。
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