2011-05-12

対談「日本復興に向けた企業の役割」柳井会長×WBS内田教授

 柳井会長の講演に引き続き、柳井会長とWBS内田教授との対談がありました。

…………

う(内田教授):最初に私のほうから対談の内容にはいるまえに
  柳井サンゴ自分からおっしゃいませんでしたが
  震災に多大な寄付をされましたがその辺の思いをお聞きしたいなと
  今日一番感じたのは日本への愛情、こういうとこがダメという強い危機感と
  そういうところと復興支援の思いは共通するのかなと

や(柳井会長):やっぱりこれ、すごい危機に今いるんじゃないかと思いまして
  あの、震災が起きた時に、思ったことは
  これ日本にとって最後のチャンスになるんじゃないかなと
  20年間成長しなかったんで
  その時に震災地ができるだけはやく復興しないといけないと思った
  東北地方でも、北関東でもかなりの店舗があって
  150店舗ほどしめていた
  非常に残念ですが、社員は全員無事だったんですが
  家族の方、ご両親とかご兄弟、数十人なくなられた
  大震災で家族の方が、神戸でもあまりいませんでしたが
  しかも原発の事故も発生している
  自分ができること、会社ができることが精いっぱいやらないといけないと思った 
  我々自身は日本を代表するブランドだし、代表する企業だと思っているので
  我々が真っ先にやることで、ほかの企業や個人が追随してくれればいいなと

う:知ってらっしゃる方も多いと思いますが
  企業として数億円、柳井さんも10億円の規模をされて
  金額ではなくて意思決定が3月の15日だか
  そのスピード感というのはグローバルで経営されている方のスピード感だと
  それくらいの思いや危機感も強かったんだなと 
  今日の話で日本に対する強い問題意識があったが
  ユニークだと思ったのは、グローバルスタンダードがいいとおっしゃっているんでもなく
  日本企業がいいと思っているんでもなく
  ファーストリテイリング流でめざすんだと
  一方で日本人にはいろいろな課題があると。内弁慶や競争を好まないところ
  武器は身に着けるが、ベーシックなところは技術や品質
  そういうところに立脚した戦略を作っていくんだと
  あとビジョンと戦略がうまくリンクしていて
  10年間で5兆円の売り上げと1兆円の利益を出すと
  戦略がないと大風呂敷になる
  ブレイクダウンをするには頭がいい人には難しい話じゃないが
  面白かったのは、それをやるためには世界の大都市で存在感No1になるんだと
  ビジョンをオペレーションに落としてくことについては、ある種の天才なのかなと
  その2点に関してそうだとかそうじゃないとか

や:会社とかブランドとか店とか商品とか理解してもらおうと思ったら
  世界中でショーケースみたいなところがあると思う
  あるとしたら世界で大都市
  NYの話をしたが
  一番最初出店したニュージャージー
  なんで売れなかったかというと、知られていなかった
  知られていないものは売れない
  そこそこの店じゃダメなんですよね
  本当にいい店を最高の立地につくっていく
  世界一になるなら一番いい場所に一番大きい店をつくる
  その周辺に店を作っていくという、単純なこと
  内田さんは概念のほうから入っていくので
  ぼくらは事実から入っていくので、結果として概念がある
  そういうことを実務のほうから生み出す能力を、日本の企業経営者はもっとやらないと
  秀才タイプの人が多くてよくないんじゃないかと思いますが

う:コンサルや学者は後付で考えるから楽な商売だといわれるが
  結果を出さないと次がないので楽でもないが

  例えば同じようにうまくやっているのはアップル
  アップルストアは銀座の一等地
  渋谷は公園通り
  いずれにせよ一等地に
  マクドナルドも一号店も銀座
  ショーウィンドー効果はなるほどなと
  もう少し聞いてみたいのは、どこからグローバルというのを意識されたか
  最初は日本でやられていたが
  延長上でやって違うなというターニングポイントはあったんでしょうか

や:我々の商売は、あれですね、製造小売業で、自分たちで企画してチェーン店作って
  アメリカとかヨーロッパとかのアイディア
  商品を中国で作っている
  そういう小売の中で、あと僕の転機は
  香港で86年くらいにバイイング事務所を作って
  話をしていると、彼らは国境がない
  国境がないほうが商売はしやすいと思う
  あといろいろな先例があって
  アップルがそういうストアを作っている
  アップルの取締役にGAPのひとがいて
  新しいブランドは新しいところにおかないといけない
  そういうのを見ているのに、日本のハイテク企業が
  ソニーストア、キヤノンストアみたいなのを世界の一番いいところに作らないのかなと思います

う:同感で、ソニーは銀座の先進的なところがあって
  もっとブランドと結び付けていけばあんなにアップルの後塵を拝さなかったのかなと

  企業の役割について聞きたいが
  日本企業のメルトダウンというのが印象的で
  これがさらに口実になって失われた20年が30年40年になって
  カルタゴみたいになっちゃったらさびしいなと
  変革の機会を点がくれたと
  ユニクロがやられているところはわかったんですが
  企業で働くパーソンをみていて、こういうところ変わらないと通用しないぞと
  お聞きした理由は、企業としても個人としても内弁慶
  大変な危機感を持っていまして
  変わらなきゃいけないという方が今日来ているという前提で
  アドバイスなりご意見をお伺いしたい

や:同じようなことが我々の企業や社員にもある
  管理者として外国に行く
  店長やSVみたいな人が行くが
  その時に、最悪なのは、自分たちで作業はするんですよね
  日本人は上司が率先垂範してやっていく
  与えられた役割、これは管理職としていっているんですよ
  日本は階級差がない国なので、そこが裏目に出ている
  命令したら悪いな、みたいな
  でも管理職は命令する人ですよね
  やっぱりこれ、日本人や日本企業はまず自分たちが中心になって
  自分たちがHQになるというそういうことが必要だということと
  特に海外の人、日本以上にあれなんですよね
  上役のことを気にする
  絶対に上役としての仕事を完全にやることだけをやると
  下の仕事奪うことはよくないということと
  お願いなのは、我々の社員もそうだが
  海外に行って日本人だけでつるまない
  できるだけ日本語で話をしないようにしないとまずいというのと
  かならず人の輪を作る
  日本人の輪じゃなしに
  現地の人の輪を作らないとうまくいかない
  特に海外に行かれている人は、グローバルに生きると
  言葉じゃなくて、グローバルで活きることを覚悟しないと
  今の延長線上でグローバルに行けるとは思えない

う:その前に一方で、世の中でそういう話をしていると
  どこどこはできるがうちの会社は無理だと
  そういう風に考えた時点で思考停止していて
  うちの会社にも柳井さんがいたらなみたいになるので
  最初にファーストリテイリングにも苦労された方がいて
  どんなふうに新しいやり方をやっていったのか
  話は分かったけれどまねできないと思っている方が多いんじゃないかと

や:できますよね?(会場笑)
  海外では皆さんよりも能力が悪い人が、皆さん以上の仕事をしていると思う
  日本ではビジネスチャンスは少ないと思う
  日本だけでは生き残れない
  たまたま日本といういい市場があったから生き残っただけ
  僕は過去にいろいろなことを経験していて
  生まれた宇部、石炭の町。海底炭鉱というのがあった
  石炭から石油に代わるということで
  炭鉱が廃坑になる
  労働集約的産業なので、炭鉱の町があって
  小学校が全部廃校になって
  中学校で友達だった人がみな違うところに行く
  宇部市の人口も4万人減った
  宇部というのは炭鉱と工業化、沿岸部が全部工場だった
  セメントとか、ガラスとか
  昼間だと、セメントが降ってくる
  今の中国みたいな
  それもいまは工業地帯ないですよね
  僕は商店街に住んでいたが
  郊外に代わっていったので、シャッター通りになっている
  日本がそうなる可能性があるとしたら
  そうならないということと、企業経営しているひとや若い人は
  僕は縁起でもないんですが、大震災の後こういうことを言うのもどうかと思うが
  新年のごあいさつで、チェンジオアダイといったんですよ
  変化しなければ死
  そういう状況だと思います
  日本市場だとそういうことになるとおもう
  海外に出てみると、東京の銀座と同じこと
  日本のブランドほとんどないでしょ
  全世界そうなんですよ
  シンガポールも上海もパリもNYも
  どんどん出ていかないと、すきとかきらいとかじゃなくて
  そうじゃないとあなたがビジネスマンとして終わりますよと

う:チェンジオアダイは同感で
  日本に楽観していないが
  日本がダメだから頑張ってもしょうがないとなると縮小均衡で
  国がダメなら企業ががんばる、企業がダメなら俺ががんばるとしないと
  Win-Win-Winは20年前に終わっている
  最初に目覚めたのは企業
  企業の業績は増益基調で
  日本はこう、企業はこうで、でも個人は、給与増えたという人はあまりいなくて
  次に個人が目覚めてその会社を変えていくか
  変えられないなら自分が成功できるところへ移るくらいの気概が必要というのが持論
  私は無理という人はそれはそれでいいが
  沈む船に残るという意思決定をしたんだから、結果は甘受しないといけない
  柳井さんがおっしゃることと近いのかなあと
  企業としてというより個人として
  私も早稲田に来て、学部の学生はイメージと違って
  三菱三井住友みたいな会社に生きたがあると
  あと転勤が嫌だから東京で終わる企業に行きたいと
  お前それ死にたいということじゃないかと(会場笑)
  そういう学生が早稲田にも増えている
  カツを入れていただきたい(会場笑)

や:若いころは勉強しなかったが
  社会に出て変わった
  学生の人にお願いしたいのは
  社会に出て何をするかを早く決めないといけないということと
  社会に出るというのは安定とはほどとおい
  今までは保護者がいるが
  独り立ちしないといけない
  その先が嵐で沈没しそうな船にいる
  荒海でも泳げる能力を付けないと生き残れない
  もし自分で泳げたり
  沈没しそうな船を回復できればいい将来が待っている
  グローバル化が始まったばっかりで
  日本だけ見ると暗いが
  世界中で見たら明るい
  若い人に怒ってもらいたいなと
  大人に、なんでこんな社会にしたのかと
  こういうことを変えてくださいと
  若い人が変えられるような世の中じゃないとまずいと思うし、そういう時期だと思う
  国とか行政に頼れないですよね、人間は、企業は
  自分たちで国とか行政を変えていかないといけない
  変えられないなら自分たちがまず変わる
  そうじゃないと、皆さんの将来はものすごいくらいですよ
  皆さんが小さいころ、皆さんの両親の報酬はあがっていない
  そんな国は日本ではアジアだけ
  こういうことを変えていこうということを決めないと、沈没船と沈みますよ
  国が沈んでもあなたは生きていかないといけない
  もっと貪欲になってもらいたい
  社会に出たら現実問題としてわかると思うが
  その時思い出していただきたい

う:時間になりましたので
  話を聞いて心強く思ったのは
  世界にマーケットがあるからグローバル企業になると字面ならそうみえるが
  新しい日本の会社ですと
  日本の会社ということにとどまって、自分たちのやり方で世界を目指すというところに
  日本企業への示唆や激励があったのではと思う。
  本日はありがとうございました

0 件のコメント:

コメントを投稿