前回エントリに)。同社は販売チャネルをおばちゃんからネットに変えることにより
低料金の保険を販売している会社なのだが、最初はやはりなかなか知名度が高くな
く、集客に苦労していたとのこと。
その知名度を上げるきっかけとなったのが、一つのプレスリリースである。
■徹底した情報公開を目指すライフネット生命保険、付加保険料率の全面開示へ
(2008/11/21)
http://www.lifenet-seimei.co.jp/newsrelease/2008/1304.html
これまでどの保険会社も公表してこなかった、純保険料と付加保険料、つまり保険
料のうちいくらが加入者に支払われる金額になるのか(残りがコストと利益)を公表
したことにより、業界は蜂の巣をつついたような騒ぎになり、同社の知名度は一気に
あがったとのこと。
そして、もう一つ知名度を上げるきっかけになった記事がある。
■ハトが選んだ生命保険に入る/@Nifty デイリーポータルZ(2009/7/24)
http://portal.nifty.com/2009/07/24/a/
デイリーポータルZとは、アルファブロガーアワード(*)も受賞した、愉快な記
事を載せているサイト。これはその記事の一つで、ハトがどのマメを食べるかで保険
金額を決めよう、というもの。そこへライフネット生命保険の出口社長自らお茶目な
テイストで出演したところ、問い合わせが急拡大した、ということらしい。
これだけ見るとデイリーポータルは高い効果が得られるパブリシティサイト、とい
う風にも取れるのだが、基本このサイトの記事で何かを宣伝しようとしている気配は
見られない。最新記事のタイトルを見ても、
「エレベータの開閉は同時押しで開くのでは」
「意外材料食品を探る」
「親の奇行」
「埼玉の県鳥、シラコバトを見てみたい」
「ジャンプの感想をWEBで無料公開!」
「店内に県境がある店めぐり」
「ラジオ体操で万歳シーンは何度取れるか」
「玄関開けたら5分で古墳」
http://portal.nifty.com/
などと、とてもパブリシティを狙っているとは見られない様子である(ハトが好き
な様子はある)。
例えば雑誌の内容でいうと、記事と広告では読者の信頼度・注目度が違うので(広
告ってちゃんと見ないですよね)、記事の体裁を装った「記事広告」というものが
あったりする。有名人のインタビューといった体裁をとりつつ、内容は特定の製品や
サービスを褒め、ページの隅に広告マークが入っていたりするようなものであるが、
これもやはり記事よりは読み飛ばされる可能性が高い(震災直前の「日経ビジネス」
に、福島第一原発についての記事広告が載っていたのを見つけたときには注意深く呼
んでしまいましたが)。
であるので、やはり一番信頼度・注目度が高いのは記事で、そのため例えば広告と
悟られないような記事を作る「ステルス・マーケティング」という手法も存在する。
しかし、このデイリーポータルの保険の記事は、明らかに広告を狙っている雰囲気を
出しつつも(だって、社長が大きな社名のパネルを掲げているんですよ)、「笑い」
の構造に上手くはめ込むことにより読者側にはまったく広告を読んでいるカンジを与
えないという、新しい手法なのではないだろうか(新しいといいつつ、記事は2009年
のものですが)。
これを、平和裏に広告行為をすすめることと、この記事に敬意を表して「ピジョ
ン・マーケティング」と名づけたいがどうだろう(そんなの新しくもなんともなく
て、先行研究が山ほどありますよ、みたいなときは教えてくだされ)。
*アルファブロガーアワード2010
http://alphabloggers.com/2010/#top2010media