2011-04-14

矢沢潔『原子力ルネサンス』技術評論社

 事故後のスリーマイル島に日本人2人目の記者として取材をしている科学ジャーナリストの筆者が、国ごとの原子力の動向を報告する本書、タイトルどおり原子力は世界の国で徐々にその存在感を増して来ているようで、そのような状況下での今回の福島原発事故だったということが理解できました。

 以下本文で気になった部分をば。並べてみると、原子力以外の話題も多いですね。


――アメリカの電力の主力は当分石炭であり続ける可能性が高い。一見してもっともダーティーな過去のエネルギー源と思われている石炭だが、“クリーンコール・テクノロジー”と呼ばれる新技術によってきれいなエネルギー源へと姿を変え原発と並んで復権しないとも限らない。(pp.82-83)

――(引用者注:ロシアで)“海に浮かぶ原発”はまもなく姿を現そうとしている(p.101)

――どの国を見ても、地球温暖化の解決を目指して原発の出力増強や新設を推し進めているという事例はただの一つも見当たらない。(引用者注:温暖化対策は後付けの理由にすぎないということ)(p.151)

――近年の急激な原油高騰に押されて“その日”はただちにやってきた。カナダやアメリカでタールサンド(引用者注:北米に多く存在する粘土の高いタール状の原油を含んだ砂岩・頁岩。ガソリンや灯油にする過程で大きな手間とコストと環境負荷がかかる)の採掘が本格化しただけではない。この資源が大規模に集中するカナダのアルバータ州では途方もないスケールの採掘が既に日常的光景となっているのだ。(pp.156.158)

――こうした(引用者注:エネルギー供給が経済成長に追い付かない危険性がある)危うい状況で中国は世界中から必死にエネルギーをかき集めようとしており、カザフスタン、ロシア、スーダン、ベネズエラ、西アフリカ、イラン、サウジアラビア、カナダなどで独自の油田開発も行っている。すでにアフリカ西海岸の沖合の海底油田から汲み出した原油はほとんどが中国へと直行している。(p.160)

――ウランは海水にも含まれている。濃度は10億分の3.3と非常に希薄だが、放射線障害についての厳密な議論で有名なピッツバーグ大学の物理学者バーナード・コーエン教授は、ウランの価格がポンドあたり200~400ドルなら海水からウランを抽出できるようになると述べている。(中略)これは日本のようなウラン無資源国がたちまちウラン資源大国に代わりうるということをも示唆する(後略)(p.212)



※ちなみにこの本、現在アマゾンじゃ新品が売り切れていますが、ちょっと前に三省堂神田本店にいっぱい積んでありましたよ。

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